株式会社ナレッジクリエーション 代表取締役 新城直

ネットへのアクセスは基本的人権の一つ

今やインターネットを通して様々な情報が受発信されており、視覚障害者や高齢者・学習障害者にとっては、インターネットは、様々な可能性を爆発的に拡大することのできるいわば不可能なものを可能にするためのまさに「希望のメディア」となっています。この恩恵を享受できるか否かは死活問題であり、それだけにインターネットをよりアクセシブルなものにすることは必要不可欠なものとなります。インターネットへのアクセスを保障することは、情報へのアクセスを保証することになり、基本的人権の一つであると言われる所以です。

選挙法改正のポイント

選挙権は、国民の重要な基本的人権です。国の行く末や、ひいては自らの生活に関わる政治の方向を決定付ける国民の代表を選ぶための権利だからです。しかし、国民の中には、選挙権を行使したくても、選挙法が不十分であったために、候補者や政党などへの投票において必要な情報が得られずに困難を抱える人々が多数いることも事実です。
これまでの公職選挙法では、選挙の公正、候補者間の平等を確保するという理由から、選挙運動期間中に行われる文書図画の頒布・掲示その他の選挙運動について一定の規制を行ってきました。インターネット等による情報の伝達も、文書図画の頒布に当たるものとして規制されてきたわけです。今回の公職選挙法改正により、参議院選挙からインターネット等を利用した選挙運動のうち一定のものが解禁されることとなり、ホームページを通しての選挙運動が解禁されることになったのです。

ネット選挙解禁の意義

これまでの選挙では、例えば視覚障害者などは正式な点字や音訳による選挙公報などの情報がなかったため、情報へのアクセスが保障されていませんでした。そのため、情報が不足した中で自らの意思決定をせざるをえませんでした。
今回のネット選挙解禁により、障害を持つ人々の中には、インターネットを通して必要な情報を得て候補者などを選択するなどの意思決定ができるようになり、結果として政治への参加を促進できることは大きな歴史の転換点でもあります。
こうした中で今夏の参議院選挙からいわゆるネット選挙が解禁され、インターネットをよりアクセシブルなものにするために、政党や候補者のホームページをユニバーサルデザイン化するとともに、よりユーザビリティの高いものにするための質の向上が求められているのです。

音声読み上げ・ルビ振りサービスの意義

現在の多くのホームページは、文字や画像など、視覚的情報が中心のページとなっており、文字の見えづらい高齢者や弱視の方、漢字が理解しにくい学習障害を有する方には読めない、読みにくいページ構成となっています。
Webページの情報へのアクセスが保証されていなかった弱視者や学習障害を有する人達にとって、候補者サイトや政党のサイトから、音声や漢字のルビ振りサービスによって、必要な情報をリアルタイムに取得できるようになることは、きわめて大きな意味を持つことになります。
また、高齢者の中には、画面に書かれた長文を読み続けることが苦痛となっている人は多くおられると思われます。不十分な視覚機能や読字困難な状態から情報取得をせざるをえなかった人達が、音声読み上げによって簡単にその内容を確認できれば、より多くの情報を取得できるようになります。候補者や政党の政策を確実且つ容易に取得でき自らの意思をもって候補者を選択できるようになることは、インターネット選挙解禁の本質的な意義を保証することになるのです。